途上国勤務の適性診断

仕事相手にメールである依頼(or質問)をし、返事が返ってきたものの、一部不明瞭な部分がありました。「これってこういう理解で良いのですか?」と追加確認のメールを送りましたが、今度は返事が返ってきません。あなたなら、どうしますか?

1.返事が来るまで催促のメールを送る。
2.電話して確認する。
3.「返事がないということはおよそ間違ってないのだろう」と解釈する。


上記のような事態は、ケニアに限らず、海外との仕事をしていれば必ずと言っていいほど起こります。ちなみにケニアでは頻発します。こちらの都合による依頼で、2回以上のメールのやり取りがコンスタントに続くことはむしろ稀ではないでしょうか。


上記の選択肢のうち、これだけが正しいという解答があるわけではありません。ただし、適切でない解答はあります。どれでしょうか?


3?ぶぶー。答えは1です。
ここらへんが途上国で働けるかの適性の分かれ目です。


返事が来るまで何度も催促のメールを送ったところで、相手がこちらの望む回答を返してくれる可能性は低いでしょう。大抵はなしのつぶてか、見当違いの返事が返ってきます。多くの場合、相手はきちんとメールを読んでいないので、既に回答したつもりの話をなぜ何度もしつこく聞いてくるのか、理解していません。こちらのイライラが募るばかりか、相手の自分に対する心象も悪くしかねません。


で、良いのは2です。電話だと、なんらかの回答をしない限り電話を切れないので、返答せざるを得ません。なにを確認したいのか、こちらの意図を説明することもできます(繰り返しますがメールに書いても読んでません)。携帯普及社会のアフリカでは、オフィスの電話は通じなくとも個人の携帯は通じますので、そこで捕まえることができます。


しかし、3も決して不適切ではないのです。「こういうことですよね?」という確認のメールに対し、その通りである場合に返事をしないということは、途上国ではよく見られる習性です。ただしそれでは、相手がメールを読んでいないのか、読んだ上で返事していないのかが分かりません。


ここで考えるべきは、「仮にこの解釈が間違っていた場合、どの程度の深刻な事態を生じ得るか」です。果たしてそこまでの厳密性は必要かという自問自答です。相手は所詮そこまでの精度で仕事をしていないのです。例え間違っていても、大した支障にはならないのではないか、と思えば、それ以上しつこく追い立てて相手との関係を悪化させる(相手は、返事をしないといって意味不明に怒られたと感じる)より賢明な判断ではないでしょうか。日本では通用し得ない判断感覚ですね(もう少し通用してもいい気もしますが)。ここらへんが、前回のエントリで述べた適切な判断感覚が持てているか、ということの一例でもあります。


役所にいたときは、ずっと1をやっていました。もちろん、やり取りの性質上、文書で証拠を残す必要があるため、ある意味では仕方ないのですが、ジェスチャーが使えず、聞き取りにくい電話で会話をするのはなかなか緊張することもあり、なんとなく避けていた部分もあります。それでも、電話して、意図を説明して返事をもらった上で、文書でも回答してくれと言うほうが適切だったでしょう(この際、なぜ文書でも回答してほしいのか相手がよく理解していないと、またもやネグられる可能性はあります)。


ケニアに来てさらに強く認識するようになったのは、3の有効性ですかね(笑)。「この仕事はどこまでの精度が求められるか」というのは、いつでも100%を求める日本の役所(おそらく日本の多くの企業も)ではなかなか鍛えられないのですが、重要な判断基準だと思います。この判断をもう少し行うようになると、我が国の過剰労働は多少ましになるのではないでしょうか。