キスム出張

キスム出張は、なかなかに疲れました。大したことはしてないんですが、アフリカのあまりの日差しの強さに油断したばかりに、一日にして肌が赤く腫れ上がり、でも夜は寒いのにホテルのボイラーの故障で水風呂...。


しかし、キスムの魚は旨い。特に湖岸にひしめく小汚い屋台で手で食べるやつが、どこのホテルのレストランよりも、新鮮で一番。あれは日本で食べても十分イケるレベルだと思うなあ。それにしても、3年前にウガンダから友人を訪ねて遊びに来て、同じ湖岸で食べたときと比べて、時間が止まっていたかのように屋台の様子が変わってないことにも驚きましたが。聞けば、再開発の話はあるものの、政治家の介入で進んでないのだとか。


で、肝心の出張目的ですが、6月に終期を迎えるプロジェクトの対象集落を回って、プロジェクト成果や今後の継続計画等についての聞き取りをしていました。


西ケニアケニアの中では降水量が多く、よく洪水被害に遭う地域(現在も洪水中)です。熱帯地域で土壌が薄い(のだと思う)上に森林の伐採・開拓が進んだため、土壌浸食が深刻で、地滑りによってgullyと呼ばれる深い渓谷が出来ています。



大雨の度に侵食が進み、家や農地、道路が流され、人々はどんどん上流域に後退せざるを得ない状況になっています。実際、道路が完全に分断された地点も見ました。


これを食い止めるため、渓谷の周辺をフェンスで囲って植物で地盤を安定化させ、さらに上流域に貯水池を作って流れ込む水量を調整し、農地に植林をしたり段丘状に耕したりして土壌の流出を防ぐ取組をプロジェクトの中でやっています。


そのほか、コミュニティ自身が作成するアクションプランに基づいて、様々な生態系管理の活動が行われていました。
・デモサイトにおける複数品種の栽培による、その土地における最適品種の選択
・実生の栽培と植林(成長の早い複数品種を選ぶほか、撹乱耐性や生物多様性保全の観点から原生種も奨励)
・アグロフォレストリーの実践(農業と林業の組み合わせ)
・輪作や混合栽培、休閑の奨励
・貯水溝や段丘の形成(土壌浸食防止)
・園芸作物の栽培
・現地で入手可能な材料による有機肥料の添加
・原生植物を用いたシロアリ対策
・小規模潅漑
・貯水池や小規模砂防ダムの形成・管理
・家畜の交雑による品種改良
・養蜂・養蚕・養魚  などなど


Agroforestryの例


換金作物の栽培などをやっているのは、活動を自立・継続させ、またメンバーのインセンティブを維持する上でも、短期的な経済的利点がないと続かないからです。植林だけやってよ、というわけにいかないので、生計手段の向上と貧困対策、生態系保全の活動が組み合わされています。


それにしても、窒素固定植物の活用(休閑地で育てて土地の肥沃化かつ飼料の高品質化)や養鶏と養魚を組み合わせた循環システムとか、まさに日本の大学院で習ったようなことが実践されているのを見るのは、本当に興味深く新鮮で、非常におもしろかったです。一方で、うまくいっているコミュニティもあればそうじゃないコミュニティも当然あるわけで、きちんと機能するコミュニティを見つけ、育てていくことが極めて重要なのだけど、それはやっぱりプロジェクトだけではどうしようもない外的要因(リーダーの存在とか部族構成とか)にも大きく左右され、成功率を高めるのはなかなか難しいとも思いました。