平均寿命の表すもの

昨年、NHKスペシャルでアフリカンドリームという特集をやっていたそうで、そのときの取材記をNHKスペシャル取材班がドキュメンタリータッチでまとめた「アフリカ〜資本主義最後のフロンティア」という本を相棒が置いていってくれた。


最近読み始めたのだが、極めて平易に書かれていて読みやすい。その中でこんなくだりがある。「働き者のじいさん」と呼ばれている59歳のトラック運転手が出てくるのだが、その説明として、

ケニア人男性の平均寿命はちょうど59歳。日本人に置き換えるならば、80歳にして現役のトラック運転手というイメージだろうか。」


私は、このイメージは正しくないと思う。日本で平均寿命を超えて例えば90歳で亡くなった場合、「天寿をまっとうしたね」「長生きしたね」という言われ方をするが、これは、平均寿命を頂点として、一山型に寿命が分布することを前提としている場合に当てはまる。


ケニアの場合、幼年期の死亡率が高いために平均寿命が押し下げられているのであって、実際にはおそらく二山型の分布となり、平均寿命より長く生きる人が、より高い確率で存在することとなる。実際、ケニア人同僚とこないだ話をしていた際、74歳で亡くなった親族の話になり、「まだ若くして亡くなったよね」という表現をしていた。


なので、途上国での平均寿命は、必ずしもその国に住む一般的な国民の平均的な寿命を意味しない。日本の常識的感覚が必ずしも当てはまらないことの一例として。


ちなみにケニアの平均寿命は2006年から5年の間に48.9歳から59.5歳と10歳以上も延びた。経済成長に伴う保健衛生状態の改善や医療制度の充実の賜物だと良いなあと思う。