2012年

明けましておめでとうございます。


年末に相棒とコスタリカに旅行に行ってきました。コスタリカは、マダガスカルガラパゴスとともに、生物を学んだ人なら一度は行きたい土地。ナマケモノやらバシリスクやら、ケッタイな生き物にたくさん出会えて感動。


ところ変わって、仕事始めとなる今日のDCは最高気温-1℃。あり得ん。ともあれ、新しい分野を学ぶのは楽しい。今年も頑張っていきます。

赤鼻の

職場からの帰り道、まんまと道に迷っていたら、オーストラリア大使館に遭遇。


玄関上にクリスマスの電光イルミネーション。サンタの帽子をかぶった水着姿の男性が、トナカイならぬカンガルー達にサーフィンボードを引っ張ってもらっている図で、先頭のカンガルーはなんと赤鼻。


大使館にこれくらいの茶目っ気があるといいね。

回復

体調はなんとか回復しました。いやはや。相変わらずめっちゃ寒いけど、多分普通の感覚では大して寒くないのであろう...。


私は災害復興チームに属することになったため、ひとたび災害が起きるとたちまち臨戦態勢。土曜早朝のフィリピンでのハリケーン被害に対応して、待機がかけられております。あっと言う間に650人も亡くなる(現時点。行方不明者の数からしてもっと増える見込み)のだから、災害の威力はすごい。


DCに越してきて感じたことを備忘録までに。

  • 精神を病んだ人の割合が多い(道を歩いていると遭遇する率が高い)。これは先進国ならではなのか、考えさせられる。
  • 一軒一軒の家が狭く、くっつきあって建っている。日本に帰ったらもっと感じるんだろうなー。ケニアは土地が広かった。
  • 黒人もアメリカ英語を喋っていてアフリカ訛りがない。これは当然なんだけどちょっと淋しい。完全に違うバックグラウンドで育ったんだなーと。
  • インターネットのスピードが速い。動画が止まらず見れるようになったー。
  • 食べ物が甘い。なぜすべて甘くしてしまうのか。おいしくない。
  • 野菜の形が整っていて綺麗。これも日本はもっとそうでしょう。
  • 職場の年齢層が下がった。コンサルタントの割合が多いので。
  • スーパーサイズの人が異様に多い。やっぱりこの国なにかおかしい。

うぬぬ

今日がDCでの初出勤日だったのだが、食中毒と風邪を併発したらしく、苦しい初日となった。食中毒はケニア由来かもしれないが、寒さと疲れで免疫力が落ちて勢いを増したようで、今日はずっと吐き気と戦う羽目に。


風邪は、ケニア最終日にアパートが一日停電で水シャワーを浴び(なんとケニアらしい顛末)、その後スーツケース×3、ダンボール箱×2を運ぶのに汗をかいてそのまま飛行機に乗り、DCに着いたらあまりの寒さに身体が凍え、到着後中一日で出勤と体力が回復する時間がなく…と風邪を引く要素はいっぱいあったのだ。


うーむ、見知らぬ土地でいきなりのダブルパンチはさすがにこたえるなーー。幸い、助けが必要なら声かけてねと言ってくれる人は何人かいるのが救いだが、何を頼めばいいか分からない。しいていえば、暖かいおかゆが食べたいなーー。


今日は息絶え絶えで家に辿り着いて、薬をがぶ飲みし、早くも就寝モード。さすがに仕事初めゆえ、休むわけにはいかぬ…。どうか明日は回復してますように…。

ケニアを去る

12月10日に、ケニアを発って本部のあるワシントンDCに異動することになりそうです。あと2週間にして、まだ「なりそう」ってところが甚だ心許ないのですが。今回の配置転換に当たっては、多くの方にお手数をおかけして申し訳ありませんでした。新しい部署では、災害リスク管理と気候変動適応のシナジーみたいなことをやるのではないかと思われます。


いやはや、相変わらずどたばたです。しかも明日から一週間、ネット環境のない山奥に出張です。果たして準備は間に合うのか?

三か条

ある日気づいたら、みみずくさんがいなくなっていました。2つあった卵もあとかたもなく消えていて。なかなか孵らないので心配だったのですが、ずっと粘り強く温めていたのに、ついに諦めて捨てていったのでしょうか。それともカラスにやられちゃったのかな。
静かになったアパートは淋しいなーー。


いろいろ定まらないことがあって、なかなかブログを書くタイミングを逸していました。そんな折、日本の公的機関勤務経験のある同僚に言われた言葉が強く残ったのでメモっておきます。


国際機関であれ、公的機関であれ、アウトプットが評価しにくいものを扱っている業界。そのため、代わりにどこで評価するか。日本の公的機関は「姿勢」で評価する。彼らの美徳は「滅私(自己主張をしない)」「服従」「清貧(金儲けを考えない)」。武士道から受け継ぐ倫理観かもしれない。そして私は既にその規範を破ってしまったと。


確かにそのとおりなんだろうなあ、と思い当たること多々。この人が数年で見切ったことを、私は10年近くいてもまだ甘い考えでいたりして、情けないというかおめでたいというか。

戦争

ケニアが揺れている。


ここのところ、ソマリア国境近くで外国人の誘拐事件が続いたかと思ったら、一週間ほど前にケニア軍がソマリアに侵攻した。アルカイダと関係の深いと言われるイスラム過激派組織アルシャバブの掃討のためだ。戦車の隊列を組んで既に複数の街を占拠し、100人近くのアルシャバブ戦闘員を殺したという。


そもそもアルシャバブは誘拐事件の犯行声明を出していない。それどころか否定している。それなのにケニア政府はアルシャバブの犯行と断定し、国境に近い難民キャンプで働いていた2名のスペイン人が誘拐された2日後には軍事行動に移った。


今回の軍事行動は事前によく調整されているようには見えない。ソマリア暫定政府の全面協力を得ていると言っていた割に、今日になってソマリアの大統領は侵攻に反対する声明を出した。欧米諸国も後方支援していると言ったそばから、アメリカとフランスにそんな事実はないと否定されるし。なぜそんなにすぐばれる嘘をつくのか。


ソマリアへの軍事協力でアメリカの信任を得てきたウガンダへの対抗だと言っているジャーナリストがいたが、それはないだろう。それにしてはタイミングが遅すぎるし、だったらもっと事前にアメリカと調整しておくくらいの知恵はあろう。誘拐事件が続いて観光産業への打撃が大きい(ラム島も誘拐の舞台となった)ケニア政府の威厳を国際社会に見せるためのパフォーマンスとも言われるが、それにしても大した下準備なしにゲリラ戦に入るなど、リスクの大きすぎると思うのだが…。


アルシャバブはこれに対して報復宣言をしており、ナイロビの高いビル等は狙い目だと予告してきた。それとも因果関係は不明だが、昨夜にはナイトクラブに手榴弾が投げ込まれ、今日はバス乗り場で爆発物が爆発し、5つ星ホテルから手榴弾とも取られる不審物が見つかった。アメリカ大使館はテロの脅威が増しているとする警告を出し、街の緊張感が高まっている。


しかし、私から言わせれば、いまのケニアに戦争をやっている余裕はないのである。うちの同僚に言わせれば、それ以前に、今のケニアは「片方のエンジンが壊れ、もう片方のエンジンがオーバーヒートの状態で、嵐に突入しようとしている飛行機」といった状態なのである。


ケニアでは国際市場の影響もあり食料価格や原油価格が高騰し、主食であるトウモロコシの価格は去年の2倍にもなった。未曾有のインフレに襲われており、人々の生活を圧迫している。壊れたエンジンとは、輸出による歳入が輸入に伴う支出を賄えない貿易赤字が恒常的に続いていること。オーバーヒートのエンジンは、その貿易赤字を、別の短期の(一般により不安定な)資金流入(外国投資や海外送金)で賄っている危うい状況が続いていること。嵐に突入しようとしているとは、輸出先の市場の大半を占める欧州が深刻な経済危機に陥ろうとしていることを指している。


このままでは、人々の生活は破壊され、これまでの堅調な経済成長の効果を台無しにするばかりか、社会を不安定化させかねない。戦争によって市場の信頼が落ちれば、オーバーヒートのエンジンはついに機能しなくなるだろう。あるいは戦争は、そんな状況から人々の目を逸らして国民の一体感を高めるためかと穿った見方をしかねない。マスコミが、ケニア軍の「快進撃」を報道する様子は、第二次世界大戦下の日本はこうだったのかと思わせるほど、気持ち悪いという言葉に尽きる。


そもそもアルシャバブ戦闘員といったって、強制的に徴兵された罪のないソマリア人たちが大半ではないか。大義のマスクをかぶった、憎悪の連鎖となるだけの殺し合いはやめてほしいと願うばかりだ。